ありえない街の記録−『さいごの色街 飛田』井上理津子(著)

「なんだこの街は!ありえない…」 飛田の町に足を踏み入れた人は誰でもそう思うだろう。

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町の再開発が進み、治安も良くなった天王寺には、いまでは多くの観光客が訪れるようになった。

通天閣やジャンジャン横丁は休日ともなれば、国内外の観光客であふれている。

ファミリーやカップルも楽しそうに散策している。

日本一の高層ビル「あべのハルカス」も天王寺にある。

そんな天王寺界隈は、他府県から来た知人を案内してあげると、とても喜んでもらえるディープな大阪を気軽に楽しめる街だ。

しかしそれはJR新今宮駅の北側(つまり大阪環状線の内側)であって、駅の南側になるとちょっと様子が違ってくる。

駅の南側には、日後い労働が多く集まる「あいりん地区」や本書で紹介されている色街の「飛田新地」がある。

 

飛田新地は、明治時代に焼失した難波の遊郭を移転したのがその始まりだと言われている。

その後、戦前の赤線の時代をへて、紆余曲折はあるものの、当時の様子を色濃く残しなから今日につながる。

つまり飛田は現在に残る遊郭だというわけだ。

 

飛田の街でどのようなことが行われているかは、本書の第一章にある、男性たちのインタビューを読めばわかる。

この時代に、大阪という大都市の一角で、なぜそのような事(つまり売春)が行われているのか?

その疑問を解き明かすために、著者は資料を漁り、体当たりのインタビューを試みる。

インタビューの相手は

 ・お店で働くおねえさん

 ・お店を切り盛りするおばちゃん

 ・自治組織の飛田料理組合

 ・店のオーナー

 ・おんなのこを斡旋するヤクザ

 ・飛田を管轄している警察署

などなど

もちろんインタビューは(警察署でさえ)一筋縄ではいかない。

おんなのこを斡旋するヤクザなんて簡単に会える人ではないし、おんなのこやおばちゃんなどの「中の人」は会えても、軽々しくインタビューには答えてくれない。

そんな人達から少しづつ話を聞き出し、街の実態を浮かび上がらせるのが、この本の醍醐味だ。

また、新聞に掲載されている飛田のお店の求人広告(もちろん飛田とはわからないように記載されている)に電話でアプローチして、実際に面接に行くなど、生々しい飛田の雰囲気が感じられるところも多くある。

300ページほどのノンフィクションの本だが、執筆に12年もかかっているという。

ことこつと取材を重ねてきた成果がぎっしりとつまっている。

 

飛田は男性の街のイメージが強いが、街の主役は女性たちだということがこの本を読めばわかる。

そんな街だから、女性である著者が街に深く突き刺さることができたのだろう。

おすすめのノンフィクションです。

著者による本の紹介

きょうの”きっかけ”

書店をぶらぶらしているときに、たまたま手にとった本ですが、一瞬で引き込まれ、一気読みしてしました。

あとからネットで調べてみると、成毛 眞さんが『ノンフィクションはこれを読め!』で紹介されていた本なのですね。

自分が選んだ本が紹介されていて嬉しい半面、すでに世の中に知られた本だとわかりちょっと残念んだったり…

最後までお付き合いいただきありがとうございます。
今回はこれぐらいで。
それでは、またお会いしましょう!

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