「今日の写真」を読み解くための必須教科書!−『たのしい写真』ホンマタカシ(著)

高性能なデジタルカメラを使えば、きれいな写真では誰でも撮れる。

でも人の心に刺さるような「いい写真」を撮るのは難しい。

たのしい写真

最近のデジタルカメラは性能がとてもいい。

カメラまかせのオート設定で撮影すれば、かなりきれいな写真が撮れる。

カメラ初心者としては本当に心強いが、自分で設定するよりオートのほうが、きれいに撮れるのは少し悔しい。

 

きれいな写真はカメラまかせで大丈夫だが、人を感動させるような「いい写真」を撮るのはカメラマンの腕にかかっている。

「いい写真」を撮るためには、どのような写真が「いい写真」なのかがわかっていないといけないのだが、それがなかなか難しい。

女優さんの写真集なら、いいとかよくないとか評価できるのだけど、ゲイジュツ的な写真になると理解の範疇を超えてしまう。

写真集に掲載されいる写真や、写真会に出展されている写真は、間違いなく「いい写真」なのだろうけれど…

 

ホンマタカシさんは、芸術的な写真から広告まで、幅広く手がけられている海外でも有名な写真家。

そんな写真家が写真を読み解くための教科書を書いてくれているのだから、写真が趣味と言うのであれば、これは読まないといけないでしょう!

本のサブタイトルは「よい子のための写真教室」、 帯には「今日の写真」を読み解くための必須教科書!とある。

これこれ。

こういうのを探していたんだよな。

 

『たのしい写真』では、写真の歴史を説明したあとに、現代の写真についての解説がある。

過去の写真の延長線上に、現在の写真があるという考えからだ。

ホンマタカシさんによると、芸術としての写真には「決定的瞬間」「ニューカラー」「ポストモダン」いう3つの大きな流れがあるという。

「ポストモダン」というのは、1990年頃から始まる「今の写真」に直接つながるもので、「決定的瞬間」と「ニューカラー」は、その「ポストモダン」までの流れだ。

今回は、「ポストモダン」までの流れである「決定的瞬間」と「ニューカラー」について簡単に紹介したい。

時代は第二次世界大戦が終わった頃の話になる。

決定的瞬間

代表的な写真家は、アンリ・カルティエ=ブレッソン。

小型カメラ(当時の小型カメラはライカだ)を携えて、フットワーク軽く「偶然の一瞬をとらえて芸術的に構成する」というのがその信条だ。

たとえば、「雑踏の人びとが偶然に幾何学的にきれいな形を作る一瞬」を写真で切り取るように。

「決定的瞬間」というのは、ブレッソンの代表的な写真集のタイトルでもある。

小型カメラを携えて、フットワーク軽く路上でスナップを撮るというのは、いまでも多くの人が採用している撮影のスタイルだ。

それぐらい写真界に影響を与えたのがこの「決定的瞬間」である。

ニューカラー

代表的な写真家は、ウイリアム・エグルストン。

「決定的瞬間」がモノクロ写真だったのに対して、「ニューカラー」は文字通りカラー写真が中心となる。

しかし「決定的瞬間」との決定的な違いは、モノクロ対カラーにあるのではない。

「ニューカラー」は、事件や人びとの大げさな表情がなく、凡庸な日常の光景が映しだされているだけの写真なのだ。

ウイリアム・エグルストンの写真も、アメリカ南部のなんの変哲もない風景をおさめたもの。

「ニューカラー」の写真は、画面の隅々にピントが合い、画面全体が等価値で表現されているのが特長だ。

この「等価値」というのが「ニューカラー」のキーワードになる。

決定的瞬間などはそもそも存在せず、世の中はすべては当価値であるというのが「ニューカラー」の主張なのだ。

 

「決定的瞬間」と「ニューカラー」のあとに、「ポストモダン」の時代が続く。

「今の写真」に直接つながるのが「ポストモダン」だから、「ポストモダン」を理解すれば、「今の写真」を読み取ることができるようになる。

言葉で言うほど簡単ではないのだけど。

でも、基本を抑えておけば、いつかはわかる日が来るはず。

「きれいな風景を撮るだけが写真じゃない」と思う人におすすめ!

きょうの雑録

本書の続編の『たのしい写真(3)』で、「ニューカラー」に取り組むワークショップが繰り広げられるのですが、これがかなりの難敵。

頭ではわかっているつりでも、実際に撮影するとなったら、どのように撮ればいいのかさっぱり。

芸術的って難しいですね。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。

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