日記こそ個人グログの最高のコンテンツなのかもしれない〜『えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる』by 小山田咲子

アクセスアップを目指すなら、ブログに日記を書いてはいけない。

だからと言って、日記ブログに価値がないわけではない。

IMG 7601

一般的には、個人のブログというものは公開日記だと思われているのではないだろうか?

仲間内で楽しむのであれば、もちろん日記ブログでまったく問題ない。

しかし、ブログを「多くの人に読んでもらいたい」とか、「アクセスを増やして広告収入を得たい」と考えているなら、日記ブログを書かない方がいい。

アクセスアップのためのブログセミナーというものに参加すると必ずそう云われる。

なぜ日記ブログがダメかというと、一般人の日常なんて誰も興味がないから。

そこいらのニーチャンやネーチャン、ましてやオッサンの日常なんて誰ものぞいてみたいなんて思わない。

しかしタレントさんやスポーツ選手などの有名人の日常であれば、ちょっとのぞいてみたいと思う。

だから、改行だらけでスカスカの絵文字たっぷりで大した内容がない日記でブログても、月間のアクセス数が数百万を誇るブログなんていうのもある。

つまり日記ブログは知名度が高い人が書くことに価値があって、そうではない人が書いてもまったく意味はない。

(繰り返して書くが、仲間内で楽しむだけなら問題ない)

もし僕が、満員の通勤電車で押されてムカついたことととか、会社で上司やお客さんに叱られて凹んだこととか、居酒屋で呑んでいたらかわいい子がいて心がときめいた、とか書いたら読みたいですか?

読みたくないですよね?

少なくとも僕は、おっさんの日常なんて興味がない。

でも本当に日記ブログには価値がないのだろうか?

もしかすると、日記ブログには大きな可能性があるのではないか?

そんなことを考えさせられる本に出会った。

では、さっそく紹介しよう!

えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる 新装版

えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる 新装版

  • 作者:小山田 咲子
  • 出版社:海鳥社
  • 発売日: 2013-11-25

この本は、小山田咲子さんという1人の女性が書いた日記ブログをまとめたものだ。

2002年から2005年の間に書かれたブログの中から、191本を選んでおさめられている。

小山田さんは1981年生まれなので、2002年から2005年というとちょうど二十歳を迎え早稲田大学に在学されていたころになる。

ブログに書かれている内容も、一人暮らしのこと、友達のこと、学校のこと、恋人のこと、家族のこと、旅行のことなど、学生さんらしい投稿が多い。

しかしそこらにある普通の日記ブログではない。

ひとつの作品集として書き下ろされたとも思えるぐらいだ。

文章はリズム感があって読みやすい。

素人とは思えないレベル。

記事は読んで楽しくて、考えさせられて、勇気が与えられて、ユニークもあって、最高の日記ブログだ。

初回の投稿を抜粋すると

 日記書くことにした。HP編集に手間取るのでカウンターが勝手にどんどんまわって恥ずかしい。はい、ひとりでまわしてます。
 掲示板だけはなんとか取り付けた。無理。無理。慣れないことはするもんではない。悲しい。もうそのままにしておく。

ただブログを開設したというだけの内容だが、魅力的な文章だとは思いませんか?

2つ目の投稿は、「レポートを書くためにカフェに行く」という話だが、表現がとってもユニーク。

次は、「しばらく連絡を取っていない人にメールを送ったら宛先不祥で帰ってきて、友だち関係が終わったことを実感する」という話。

ケータイのアドレス帳だけでつながっている人間関係は身につまされる。 このあたりで、いっきに小山田ワールドに引きこまれてしまった。

 

12月29日の投稿には、夜遊びした知り合いの女子高生が「泊めてくれ」とやって来る話がある。

家も学校も面倒くさい、大学なんて行きたくない、友達はバカばっかり、彼からは「もう会えない」と云われた、と大泣きする彼女の姿にひと言も云えず、小山田さんが書いた文章。

いくら彼女が大袈裟に見えてもこれからの方がもっと大変よと言うのはただの脅しだ。年上の人間が年下の人間に、ただ「知らない」という理由だけで自分がちょっと垣間見た世の中の複雑さやつらさを見せようよするのは罪だと思う。「誰もが通る道」という言葉は正しいようで正しくない。それぞれが、それぞれの道をそれぞれの悩み方で悩みながら歩くしかない。その解決法も人それぞれだから、アドバイスなんかしようがない。できるのはただ、道の途中で息を切らしぎみの人に、その時は楽しく歩いている人が給水所のありかとか景色のいい場所をちょっと教えてあげることぐらいか。「この先さらに坂」とか言われたら歩く気も失せてしまう。

他にも感性豊かな文章が多くあり、日記ブログでここまで表現できるのか、と感心してしまうが、最後に本の帯にも書かれている1月18日の投稿を紹介してたい。

何かを本気でやりたいと思った時、その人以外の誰も、それを静止できる完璧に正当な理由など持ちえていない。

おわりに

実は小山田さんは24歳のときに、旅行先のアルゼンチンで事故に会い亡くなられている。

この『えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる』は、彼女が亡くなられたあとにご両親によって出版されたものだ。

しかしこの本は遺稿集だから輝いているのではないということは、文章をひとつでも読めばわかっていただけると思う。

 

実のところ、僕はまだこの本を読みきっていない。

全体の2/3ぐらいを読んだところ(あと100ページほどある)で、急に読む速度が遅くなった。

小山田さんの本がこれしかないと思うと、いっきに読みきってしまうのがもったいないから。

長編小説を読んでいるときに感じる「終わりは気になるけど、読み終わることで『この世界』も終わってしまうことが悲しい」という気持ちに似ている。

そんな日記ブログの可能性を教えてくれる素晴らしい本に出会った。

これからブログを書こうとしているすべての人におすすめの本です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加